目次
はじめに

「デッドストック」という言葉は、古着やファッションの記事で目にすることが多いですが、実際には使われる業界や場面によって、少しずつ受け取られ方が変わります。同じように「在庫として長く残っている状態」を指していても、それが新品として扱われるのか、価値のあるものとして見られるのか、それとも処分の対象になるのかは、必ずしも同じではありません。言葉だけが先に広まり、使う人と受け取る人のイメージがそろっていないため、「これはどう判断すればいいのだろう」と迷ってしまう場面が生まれやすくなっています。この記事では、用語としての意味や判断の基準、間違えやすい点を、順を追って確認できるように整理しています。
デッドストックとは?
デッドストックという言葉は、本来売り場に出るはずだった商品が、そのまま表に出ない状態で在庫として残り続けている様子を指します。製造された時点では販売を想定しており、誰かに使われることなく、倉庫や保管場所で眠ってきた点が共通しています。何十年も前に作られた古い商品であることもあれば、意外と最近の製品である場合もあります。どれだけ時間が経ったかよりも、「売る流れから外れてしまった状態」が注目される言葉です。
英語「Dead Stock」とは?
英語の「Dead Stock」は、売買の動きが止まってしまった在庫を指す言葉として使われています。売れないまま倉庫の棚やバックヤードに置かれ続け、入荷や出荷の入れ替わりが長いあいだ起きていない状態を思い浮かべると分かりやすいです。壊れている、使えないといった意味ではなく、「売る流れから外れてしまっている」という点が大きな特徴になります。そのため、会計や在庫管理の現場では、利益を生まないまま保管費用だけがかかり続ける存在として意識されることが多くなります。
日本語で使われるデッドストックとは?
日本語では、デッドストックという言葉が「使われていないまま残っている古い商品」を指して使われる場面が増えています。特に衣類や雑貨の分野では、発売された当時の状態がそのまま保たれていることが強調されやすくなります。そのため、タグが付いたまま残っていることや、箱から出されていない点が、状態の良さや珍しさと結びついて受け取られることもあります。本来の意味に加えて、価値や雰囲気まで含めた言葉として使われる傾向が見られます。
業界が変わっても共通する「デッドストック」とされる状態とは?
分野が変わっても共通しているのは、もともと売ることを目的に作られた商品が、流通の中に入らないまま残っているという点です。実際に使われたかどうかよりも、店頭に並んだり取引されたりする流れに乗らなかった事実が判断の軸になります。どれくらいの期間保管されていたかや、見た目が新しいか古いかは、この言葉の定義そのものには含まれていません。こうした条件がそろった状態を指して、デッドストックと呼ばれます。
デッドストックとその他の在庫用語の違い
在庫に関する言葉は、日常では似たような意味で使われることが多く、使われる場面によって指している状態が少しずつずれて伝わることがあります。デッドストックという言葉も、余剰在庫や売れ残りと重ねて受け取られやすい表現の一つです。ぱっと見た印象や結果が似ていても、そうなった理由や置かれている状況は同じとは限りません。それぞれの言葉が何を指しているのかを切り分けて考えることで、混乱しにくくなります。
デッドストックと余剰在庫の違い
| 観点 | デッドストック | 余剰在庫 |
|---|---|---|
| 発生理由 | 販売の流れから外れ、そのまま残った | 需要を見込んで多く仕入れ・生産しすぎた |
| 販売状況 | 売り場や商品一覧から外れている | 店頭・ECで販売は継続している |
| 商品ページ | 非公開・削除されていることが多い | 公開されたまま |
| 販売の動線 | すでに止まっている | 今も動いている |
| 値下げ・施策の余地 | 基本的に想定されていない | セールやキャンペーンで消化される |
| 在庫の扱われ方 | 管理・処分対象として扱われやすい | 販売調整の対象として扱われる |
| 売れる可能性 | 低い(再販前提ではない) | ある(条件次第で動く) |
| 具体例 | 商品登録が削除され、倉庫に残ったままの在庫 | 商品ページはあるが在庫数が多く減らない商品 |
余剰在庫は、売れると見込んで多めに仕入れたり生産した結果、想定より売れずに残っている在庫を指します。たとえば、店頭やECサイトには今も商品ページがあり、通常価格やセール価格で販売は続いているものの、在庫数が多くてなかなか減らない状態を想像すると分かりやすいです。一方でデッドストックは、そもそも売り場から外され、商品一覧にも表示されず、販売の動線自体が止まっている状態を指します。値下げやキャンペーンを行えば動く可能性があるか、それとも販売対象として扱われていないかが、両者を分ける具体的な違いになります。
デッドストックと滞留在庫の違い
| 観点 | デッドストック | 滞留在庫 |
|---|---|---|
| 発生する状態 | 販売の流れから完全に外れて残った在庫 | 一定期間売れずに止まっている在庫 |
| 目安となる期間 | 1年〜2年以上動きがないことが多い | 入荷から3か月〜半年程度 |
| 商品ページ | 非公開・削除されている | 公開されたまま |
| 在庫数の動き | 長期間まったく変わらない | 表示はあるが売れていない |
| 販売計画での扱い | すでに対象外 | まだ対象に含まれている |
| 値下げ・施策 | 想定されていないことが多い | 20%〜30%の値下げや露出増で対応 |
| 売れる可能性 | 低い(再販前提ではない) | ある(条件次第で動く) |
| ECでの具体例 | 商品ページが非公開、在庫だけ倉庫に残る | 在庫10点・20点表示だが直近1〜2か月注文なし |
滞留在庫は、たとえば入荷から3か月〜半年ほど経っても売れず、倉庫や棚に残っている在庫を指します。ECサイトでは商品ページが公開されたままで、在庫数も10点、20点と表示されているものの、直近1〜2か月は注文が入っていない、といった状態が近いイメージです。季節セールで20%〜30%値下げしたり、露出を増やしたりすれば、再び動く可能性は残っています。一方でデッドストックは、1年、2年と在庫数がまったく動かず、商品ページも非公開になり、販売計画やセール対象からも外された状態を指します。保管期間の長さよりも、「今後も売る前提で管理されているか、それとも売る想定自体がなくなっているか」が、両者を分ける具体的な違いになります。
デッドストックと死蔵品の違い
| 観点 | デッドストック | 死蔵品 |
|---|---|---|
| 目的の前提 | 販売することを目的に管理されていた | 使用することを目的に保管されていた |
| 発生する場面 | 商品として製造・仕入れされた在庫 | 個人の持ち物や社内備品 |
| 具体的な期間感 | 1年〜2年以上、取引履歴がない | 5年、10年と使われないまま |
| 取引・販売履歴 | 取引実績がなく、売り場から外れている | そもそも販売履歴は存在しない |
| 保管場所の例 | 倉庫、バックヤード、在庫置き場 | 押し入れ、物置、社内の棚 |
| 管理上の扱い | 在庫として管理・処分対象になりやすい | 存在だけ確認され、放置されやすい |
| 動く可能性 | 再販されない限り低い | 使われる可能性は状況次第で残る |
| 判断の分かれ目 | 「売る前提」で残ったかどうか | 「使う前提」で眠っていたかどうか |
死蔵品は、たとえば購入から5年、10年と一度も使われないまま、自宅の押し入れや物置にしまわれている物を指します。会社であれば、備品として購入されたものの、担当者が変わったり用途がなくなったりして、棚卸しのたびに存在だけ確認される文房具や機器などが近い例です。これらは最初から販売する予定がなく、使う前提で保管されていた物になります。一方でデッドストックは、商品として製造・仕入れられ、売ることを目的に管理されていたにもかかわらず、1年、2年と取引履歴がなく、売り場や商品一覧から外された在庫を指します。同じように長期間動いていなくても、購入目的が「使用」か「販売」かという前提の違いによって、言葉の意味合いははっきり分かれます。
デッドストックと新品・未使用品の違い
| 観点 | デッドストック | 新品・未使用品 |
|---|---|---|
| 定義の軸 | 販売前提で管理されていた在庫が流通せず残った状態 | 一度も使われていない状態 |
| 使用歴 | なし(未使用であることが多い) | なし |
| 製造・仕入れからの期間 | 1年〜2年以上経過していることが多い | 期間は問われない |
| 販売・取引履歴 | 一度も売れていない、または長期間動きがない | 販売履歴の有無は問われない |
| 商品ページ・売り場 | 非公開・削除されていることが多い | 公開・販売中であることも多い |
| 流通との関係 | 流通の動線から外れている | 流通しているかどうかは関係ない |
| 判断基準 | 「売る前提で管理されてきたか」「流通で動いたか」 | 「使われたかどうか」のみ |
| 具体例 | 2年前に仕入れたが一度も売れず倉庫に残った商品 | 昨日買って未開封の商品、20年前製造で未使用の商品 |
新品や未使用品という言葉は、「一度も使われていない状態」であることだけを指します。たとえば、昨日購入して箱から出していない商品でも、20年前に製造されて押し入れに保管されていた商品でも、使用歴がなければ新品・未使用品に当てはまります。一方でデッドストックは、未使用であることが多いものの、それだけでは成立しません。製造や仕入れから1年、2年、あるいはそれ以上の期間が経過し、その間に一度も販売実績がなく、売り場や商品一覧から外されたまま在庫として残り続けてきた背景があります。使用の有無ではなく、「売る前提で管理されてきたか」「流通の中で動いた履歴があるかどうか」が、両者を分ける具体的な違いになります。
デッドストックと判断される3つの条件
デッドストックと呼ばれるかどうかは、見た目の印象や感覚だけで決まるものではありません。商品が古く見えるか新しく見えるかとは関係なく、これまで流通の中でどのように扱われてきたかが関わってきます。販売する意図があったのか、実際に売り場に出たことがあるのかといった履歴が、判断の材料になります。商品の状態そのものよりも、どんな経緯でその場所に置かれてきたかが話題の中心になります。
一定期間在庫として動きがない
長いあいだ保管されている在庫は、デッドストックと呼ばれる場面が増えていきます。たとえば、入荷から2〜3週間、あるいは1〜2か月売れない程度では該当せず、1年、2年と在庫数がまったく動かない状態が続くと、そう呼ばれやすくなります。ただし、2年以上保管されていても、商品ページが残り、定期的に再入荷や販促が行われている場合は、デッドストックとは受け取られません。保管期間の長さそのものよりも、「今も販売対象として管理されているか」「販売を前提とした動きが残っているかどうか」によって、受け取られ方は変わってきます。
販売・出荷の実績が途切れている
一度も店頭に並ばず、取引記録も残っていない在庫は、デッドストックと呼ばれやすくなります。たとえば、仕入れから1年以上が経過しても出荷履歴がゼロで、POSや受注管理システム上でも販売実績が一件もない状態が続いているケースです。反対に、発売当初に店頭へ並び、最初の数か月で数点でも販売履歴があり、その後シーズンを変えて再び売り場に戻された商品は、同じ長期在庫であっても別の扱いになります。売買の流れに一度でも乗ったかどうかは、出荷日、売上伝票、在庫移動履歴といった記録から確認でき、その有無が判断の分かれ目になります。
販売目的で残された在庫ではない
将来の販売や企画を見越して保管されている在庫は、最初から目的を持って管理されている状態です。たとえば、半年後や1年後の再販企画に向けて一定数を確保し、在庫管理表にも「再販売予定」と記載されているケースが当てはまります。一方で、発売から1年以上が経過しても販売実績がなく、販促計画や再販予定も設定されないまま倉庫に置かれている在庫も存在します。見た目は同じ未使用品でも、こうした経緯の違いがあり、デッドストックと呼ばれる場面では、後者のように売れ残った結果として管理から外れていった状態を指すことが多くなります。
評価されやすいデッドストックの条件
デッドストックであるという事実だけで、必ず価値が付くわけではありません。たとえば、売れずに大量に残った理由が需要不足だったのか、それとも流通量が極端に少なかったのかによって、受け取られ方は大きく変わります。どちらも未使用品であっても、前者は定価の半額以下で扱われ、後者は定価を上回る価格で取引されることもあります。価値が語られる場面では、「なぜ残ったのか」「どんな環境で保管されていたのか」といった条件がいくつも重なっています。
当時の流通量が少ないまま未使用で残っている
衣類の分野では、発売当時の流通量がもともと少ないまま残っていた場合に、注目されやすくなります。たとえば、当時の生産数が数百着程度で、店頭にほとんど並ばなかった商品が、そのまま未使用で残っていたケースでは、単なる売れ残りとは受け取られません。発売時に売れなかったのではなく、市場に十分出回らなかった背景が分かると、印象は大きく変わります。タグや替えボタン、袋などの付属品がすべて残っており、箱に入れたまま10年以上倉庫で保管されていたと分かると、その状態の良さや希少性が評価に影響します。
年代・ブランド・保存状態がそろって確認できる
製造された年代が古く、現在は同じ仕様が作られていない場合、関心が集まりやすくなります。たとえば、20年以上前に製造が終了したモデルや、当時の素材や縫製が再現されていない製品は、今では入手手段が限られます。加えて、ブランド名や型番がはっきりしており、発売年や当時の価格帯が分かると、比較や判断がしやすくなります。保管環境についても、湿度50%前後で管理され、直射日光を避けて10年以上保管されていたかどうかが見られます。見た目だけでなく、開封時の匂いや生地の硬化、ゴムや樹脂部分の変化など、素材の状態が確認される場面もあります。
大量生産や需要不足が原因で残った在庫ではない
大量生産され、単に需要が途切れただけの商品は、未使用であっても評価が上がりにくくなります。たとえば、発売時に数万点単位で生産され、セールを重ねても在庫が残った商品は、数年後に未使用で見つかっても定価の30%以下で扱われることがあります。流行の色やシルエットが強く反映されたデザインや、同じような代替品が今も多く出回っている商品は、残っていても注目されにくくなります。さらに、5年以上保管される中で黄ばみやゴムの劣化、合皮のひび割れなどが進んでいる場合、未使用である点が評価につながらず、在庫処分や廃棄の対象として扱われるケースも見られます。
業界によって変わるデッドストックの見え方
デッドストックという言葉は、使われる業界によって受け取られ方が大きく変わります。たとえば古着業界では、20年、30年前の商品が未使用で残っていること自体が価値として語られる一方、製造業や物流の現場では、1年以上動かない在庫は管理コストを生む存在として見られます。同じ「売れていない在庫」であっても、販売による付加価値を期待する立場と、保管費や棚卸しの手間を負担する立場では、前提となる目的が異なります。そのため、同じ数量、同じ状態の在庫であっても、立場が変わるだけで評価や扱われ方が大きく変わります。
アパレル・古着業界では希少性や魅力として見られる
アパレルや古着の分野では、未使用のまま残っていたという点そのものが、強く注目されやすくなります。たとえば、1990年代に製造されたモデルが一度も販売されず、タグ付きのまま30年近く保管されていた場合、当時の状態がそのまま残っていることが評価の前提になります。売れなかった理由よりも、現在の市場にはほとんど出回っていない点が意識されることが多くなります。そのため、通常の販売ではなく、期間限定の展示や特集企画として紹介される場面も少なくありません。
製造業・物流業では保管コストを生む動かない在庫として見られる
製造や物流の現場では、デッドストックは「動かない在庫」として明確に認識されます。たとえば、半年から1年以上出荷実績がなく、倉庫の棚を占有し続けている部品や製品は、保管費用だけが発生する存在になります。1パレットあたり月数千円の保管料がかかる場合、10パレット分で年間数十万円のコストが積み重なります。使われない部品や製品が棚に残り続けることで、棚卸しや管理の手間も増え、再利用するのか廃棄するのかといった判断が後回しにされる状況が生まれます。
小売・ECでは販売計画から外れた処理対象として見られる
小売やECでは、デッドストックは販売計画から外れた在庫として扱われます。たとえば、発売から1年以上が経過し、新商品が次々と投入される中で、旧モデルの商品が倉庫に10点、20点と残り続けている状態です。商品ページは非公開になり、検索結果や売り場にも表示されないため、担当者以外には存在が見えにくくなります。その後、在庫整理のタイミングで50%〜70%引きのセールや、複数点をまとめたセット販売として処理される場面も見られます。
デッドストックが発生する理由
デッドストックは偶然に生まれるものではなく、いくつかの段階を経て残っていきます。たとえば、発売前の予測では月に100点売れる想定で生産された商品が、実際には初月に20点しか動かず、その後ほとんど売れなくなることがあります。途中で需要が落ちたり、流通先が変更されたりすると、販売計画が見直されないまま在庫だけが残ります。こうした変化が重なり、1年、2年と出荷のない状態が続くことで、倉庫や棚に留まり続けるデッドストックが生まれます。
需要予測を上回る生産が行われた場合
販売数を多く見積もりすぎると、想定より売れずに在庫が残ります。たとえば、月間200点の販売を見込んで1,000点を生産したものの、発売初月に50点売れたあと需要が落ち、翌月以降は月に5点ほどしか動かなくなるケースです。追加生産を止める判断が遅れると、在庫数は減らないまま倉庫に積み上がっていきます。その結果、半年から1年後には販売計画から外され、出荷実績のないまま動かない在庫として残ることになります。
規格変更や流通停止によって扱えなくなった場合
製品の仕様が変更されると、旧規格の商品は流通の対象から外れやすくなります。たとえば、モデルチェンジによって型番が切り替わり、旧仕様の商品が200点ほど残っていても、現行品と同じ売り場には並べられなくなるケースです。使えないわけではなくても、取引先が新仕様のみを扱うようになると、販売先そのものを失うことがあります。その結果、1年、2年と出荷のないまま倉庫に保管され続け、動かない在庫として残る状態が続きます。
廃番やブランド終了で販売ができなくなった場合
シリーズやブランドそのものが終了すると、残っている在庫の扱いは一気に宙に浮きます。たとえば、年間展開していたブランドが終了し、最終生産後に未使用の商品が300点ほど残ったものの、再生産も再販企画も立てられなくなるケースです。担当者が異動したり退職したりすることで、その在庫が優先的に扱われなくなることもあります。その結果、1年、2年と販売実績がないまま、未使用の状態で倉庫に残り続けることになります。
デッドストックに関するよくある勘違い
デッドストックという言葉は、受け取る人によって思い浮かべるイメージがばらつきやすい表現です。たとえば、「価値の高い掘り出し物」を想像する人もいれば、「売れ残って放置された古い在庫」という印象を持つ人もいます。未使用である点だけが強く意識される場面もあれば、製造から何年も経っていることだけが先に目に入ることもあります。こうした受け取り方の違いから、実際の状態とはずれた理解が生まれやすく、よく似た誤解が繰り返される傾向があります。
デッドストックは必ず高いと思われがち
デッドストックと聞くと、高値が付く商品を想像する人もいますが、実際にはそうならないケースも多くあります。たとえば、発売時に5,000点以上生産され、初年度に半分以上が売れ残った商品は、数年後に未使用で見つかっても定価の20%前後、場合によっては10%以下で取引されることがあります。特別な限定性がなく、同等品や後継モデルが毎年のように販売されている商品では、未使用であることが価格上昇につながりません。「長く残っていた」という事実だけでは評価されず、需要や代替性の高さによって、価値がほとんど付かないまま扱われる場面も多く見られます。
未使用なら新品と同じだと思われがち
使われていない状態であれば新品と同じだと受け取られることがありますが、時間が経過すると状況は変わってきます。たとえば、製造から10年以上経過した未使用品では、ゴムや樹脂の部品が硬化したり、接着部分が弱くなったりすることがあります。衣類であれば、20年ほど保管された未使用品でも、生地の油分が抜けたり、縫製糸が劣化したりするケースが見られます。また、製造当時は問題なかった仕様が、現在の安全基準や規格では通用しないこともあります。使用歴がないことと、今売られている新品と同じ状態であることは、必ずしも一致しません。
古い在庫は危険・劣化していると思われがち
古い在庫は「もう使えないのでは」と感じられることがありますが、実際の状態は保管環境によって大きく変わります。たとえば、湿度40〜50%、直射日光を避けた倉庫で5年、10年保管されていた商品は、見た目や機能に大きな変化が出ていないこともあります。一方で、高温多湿の場所で同じ期間保管されていた場合、金属のサビ、プラスチックの変形、衣類の黄ばみなどが進んでいることがあります。製造年数だけで一律に判断することはできず、実際には一つ一つ状態を確認しながら扱われます。
データでみるデッドストックの実態
デッドストックは実際にどんな状態なのか想像しづらいことがあります。たとえば市場では、同じ未使用品でも数千円でまとめ売りされるものがあれば、数万円で取引されるものもあり、価格帯には大きな差があります。こうした違いを追っていくと、いつ仕入れられ、何年動かずに残っていたのか、どの時点で流通が止まったのかといった履歴に共通点が見えてきます。数字や具体的な事例を通して見ることで、デッドストックが「どんな状態の在庫なのか」が現実的に捉えられるようになります。
価格に差が出るデッドストックの例
同じ未使用品であっても、取引価格にははっきりとした差があります。たとえば、発売当時から流通量が少なく、生産数が数百点程度だった商品は、デッドストックとして見つかった場合でも1点あたり3万円、5万円といった価格で取引されることがあります。一方で、数万点単位で大量生産された商品は、未使用で残っていても、定価1万円の商品が2,000円以下に下がり、10点、20点をまとめて処理される例も見られます。こうした価格の差は、どれだけ長く残っていたかではなく、「なぜ残っていたのか」という理由の違いとして表れてきます。
売れた履歴がある在庫とない在庫の違い
倉庫からまとめて見つかった在庫が、市場で特集販売として扱われることがあります。たとえば、1990年代に生産され、20年以上倉庫で保管されていた未使用品が50点ほど発掘され、製造年や背景を明示したうえで販売されるケースです。このように年代や経緯が示されると、単なる在庫処分ではなく、1点ずつ定価以上や数万円単位で扱われることもあります。反対に、製造年や入手経路が分からないまま同数の在庫が放出された場合は、定価の50%以下でまとめ売りされることも珍しくありません。どのように市場に出されるかという見せ方が、その後の扱われ方に大きく影響します。
在庫が止まっていく流れが数字で分かる例
長期間動きがない在庫は、在庫管理表を見ても数量がまったく変わらない状態が続きます。たとえば、1年前の棚卸しで100点と記録されていた在庫が、半年後、1年後の棚卸しでも同じく100点のまま確認され、入出庫の履歴が一切残っていないケースです。その間に新商品が毎月数十点ずつ入荷していくと、古い在庫は管理上も意識されにくくなります。こうした状態が1年、2年と積み重なることで、帳簿上でも実態としても動かない在庫となり、デッドストックと呼ばれる状態が作られていきます。
在庫用語ごとのデッドストックとの違いが分かる一覧
デッドストックという言葉は、余剰在庫や滞留在庫といった周辺の用語と並べて見ることで、位置づけが分かりやすくなります。たとえば、「販売開始から3か月以内に動かない在庫」「半年以上売れない在庫」「1年以上販売実績がない在庫」と並べて見ると、それぞれが指している状態の違いが感覚的につかみやすくなります。文章だけで判断するよりも、期間や販売実績といった条件を横に並べたほうが、違いを同時に確認できます。こうして整理された形で見ることで、「これはどの状態なのか」と迷う場面が減っていきます。
在庫関連用語を比較した一覧表
| 用語 | 目安となる期間 | 販売状況 | 商品ページ・売り場 | 販売計画での扱い | 値下げ・施策の余地 | 売れる可能性 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| デッドストック | 1年以上動きなし | 販売されていない | 非公開・削除されている | すでに対象外 | 想定されていない | 低い |
| 余剰在庫 | 1〜3か月程度 | 販売中 | 公開されたまま | 対象に含まれている | あり(販促・露出増) | ある |
| 滞留在庫 | 半年程度 | 一時的に止まっている | 公開されたまま | 対象に含まれている | あり(値下げ・再掲載) | ある |
デッドストック、余剰在庫、滞留在庫はいずれも「在庫が残っている状態」を指しますが、置かれている前提ははっきり異なります。たとえば、販売開始から1〜3か月で売れ残っていても販促や追加露出の予定がある在庫は余剰在庫、半年ほど動きがなくても値下げや再掲載の予定があれば滞留在庫として扱われます。一方、1年以上販売実績がなく、商品ページや売り場から外され、販売計画にも含まれていない在庫はデッドストックと呼ばれます。売れる可能性が残っている在庫と、すでに販売の動線から外れた在庫が並ぶと、同じ棚に置かれていても意味がまったく違うことが視覚的に意識されます。
デッドストック・余剰在庫・滞留在庫の違い一覧
| 用語 | 保管期間の目安 | 販売履歴 | 流通の有無 | 商品ページ・売り場 | 販売計画での扱い | 値下げ・施策 | 判断の決め手 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| デッドストック | 1年以上動きなし | なし(ゼロ) | なし | 非公開・削除 | 対象外 | 想定なし | 流通・販売の動線から完全に外れている |
| 余剰在庫 | 1〜3か月程度 | あり | あり | 公開中 | 対象内 | あり(販促・露出増) | 売る前提は継続しているが数が多い |
| 滞留在庫 | 半年程度 | あり(直近なし) | あり | 公開中 | 対象内 | あり(値下げ・再掲載) | 条件次第で再び動く可能性がある |
保管期間、販売履歴、流通の有無といった条件を具体的に並べると、判断の軸がはっきり見えてきます。たとえば、保管期間が1年以上、販売履歴がゼロ、出荷や再販の予定もない、といった条件が重なるとデッドストックと呼ばれやすくなります。反対に、半年以上保管されていても、過去に数件の販売実績があり、値下げや再掲載の予定があれば別の扱いになります。見た目が新しいかどうかや未使用であるかは補足的な情報にとどまり、こうした判断基準を並べて確認することで、言葉の使い分けがしやすくなります。
まとめ
デッドストックという言葉は、単に古い在庫や未使用品を指すものではなく、販売を前提に作られた商品が、1年、2年と流通の中で一度も動かないまま残っている状態を指します。価値があるかどうかは「未使用である」という一点だけでは決まらず、なぜ売れずに残ったのか、どんな環境で保管されていたのかといった背景によって受け取られ方が大きく変わります。たとえばアパレルでは、20年以上前の商品が未使用で残っていれば魅力として語られる一方、製造や物流の現場では、半年から1年以上出荷のない在庫は保管コストを生む負担として扱われます。こうした違いを踏まえて用語や判断基準を整理しておくと、言葉の印象に振り回されず、その在庫が置かれている状況に合った理解がしやすくなります。